いろいろ本やWebで真空管アンプの基礎を学ぼうと思って調べてみたが、どうも知りたい基礎知識が得られないように感じている。真空管自体の増幅の原理と応用回路例は結構詳しく書いてあるが、肝心の回路の基礎原理がさらっと書いてあるので、”真空管アンプ回路設計の心”が判らない。
仕方ないので、自分で”真空管アンプ回路設計の心”を考えてみた。
例えば、真空管1個によるアンプにも下図のように3種類ある。
この3種のアンプは色々な所に形を変えて出てくる。ムラード型のドライブ段(位相反転段)もこの3つ目の回路の変形と言えると思う。

実際に、真空管パワーアンプを設計するとなると、増幅率と駆動インピーダンスなどの関係で3段になるのが一般的だと思うが、カソード接地型の増幅回路は1段目には使うが2段目には使われない。

その理由を考えるため、まずパワーアンプの増幅率配分を考えると、
初段:25倍 ドライブ段:5倍 出力段:3倍 合計:375倍
出力トランス: 1/25
NFB: 1/2
アンプトータル:7.5倍
位だと思う。10Wの出力を出すには、9Vくらいの出力電圧が必要だから、初段の入力は1.2V程度が必要で、ドライブ段の入力電圧は数十ボルトになる。
これを前提で考えると、いろいろ見えてくる。
カソード接地型の増幅回路はグリッド電圧が±数V位の範囲で使うアンプであって、それ以上(数十ボルト)の入力電圧をグリッドに加えることは出来ない。(もし加えるとグリッド電圧がプラスの領域に入っていまい、大変まずいことになる)

上図を見るとグリッドに数ボルト以上の電圧がかけられない理由は判る。
プッシュプル型のアンプはほとんどの場合、ドライブ段はムラード型かPK分割型になっているようだが、単に位相反転のためにそうなっていると説明されているが、実際はもう一つ重要な役割として耐入力の大きさが上げられるはずだ。
要するに増幅率が足りないからと言って、カソード接地型の増幅回路を2段繋いで使うことは出来ない。なぜなら2段目の入力も±数V位の耐入力しか持たないから。
そこで登場するのが、カソードフォロワー回路やPK分割回路だと思う。
カソードフォロワー回路の原理は簡単に言うと、
”大きな信号入力があるとそれに比例してプレート電流が増えるが、カソードに入った大きな抵抗により カソード電位が上昇(フォロー)し、ほど良いグリッド-カソード間電位に落ち着く”カソード電位がグリッド入力をフォローする回路と言えると思う。それにより大きなグリッド入力電圧があってもグリッド-カソード間電位は数ボルトに落ち着き、アンプが正常に動作する。カソードに100%の電流帰還をかけているとも言えると思う。
カソードフォロワー回路は残念ながら増幅能力は無いが、大きな入力(例えば±25Vとか)をグリッドに加えることが出来、かつ出力インピーダンスが低い。出力が真空管のみを通じて電源に繋がっているから、出力インピーダンスは低い(真空管の内部抵抗の数キロΩだろう)のでノイズにも強い。電流帰還もかかっているので安定度も良いし音が良いとも言えるのではないか。
そしてその二つの回路の中間的な回路が最後のPK分割回路で、
”カソードに比較的大きな抵抗が入っているので、カソード電位がグリッド電位をフォローする とともにプレート抵抗の電圧も変化するので、プレートに増幅された電圧が生じる。”増幅率も数倍はあるし、比較的大きな入力(たとえば10V以上)をグリッドに加えることが出来る。電流帰還もかかっているので安定度も良いし音が良いとも言えるのではないか。そのためドライバー段に使われるのだと思う。
こういったことを前提に、どうやったら真空管アンプの音が良くなるかを考えて行こう。
- 2014/01/14(火) 16:29:02|
- 直感アンプ塾
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0