さらに考えを補足する。
ジッター(デジタルオーディオの音質悪化)について考えるとき、『クロックの時間的ブレ』と考えるのは一面的で正しくないと思う。
”ジッター” = ”デジタルオーディオ(ビデオ)信号を汚しているすべての雑成分” と考えるべきだと思う。
以前に書いたように、『クロックの時間的ブレとノイズは紙一重』だから、ジッターを考える時それらの総量で考えなければ意味が無いと思う。
『本来あるべきデジタル信号のスペクトル以外の余分なスペクトルは全てジッターだ』 と定義すると合点がいく。
それを生み出す要因はいろいろあるだろうけど、クロックの時間的ブレはそれの一部にしか過ぎない。だからデジタルオーディオの音質を改善するためにクロックの時間的ブレだけを減らそうとするのは意味が無い。(クロックの時間的ブレとノイズは回路によって入れ替わる事がある)
クロックの時間的ブレ以外にも、普通の電気的ノイズも余分なスペクトルだ。
私の経験から考えても、デジタルオーディオの音質改善には、発振精度の高いXTALを使うより駆動力の高いXTALを使ったり、電源のノイズを減らすことが大きく寄与する。
ジッターを単純にクロックの時間軸のブレと考えるのではなく、信号のスペクトル的(総量的)な汚れと考えて、それを減らす対策がデジタルオーディオには必要だと考えると、私の経験と理論が合うように思う。
だから、超高精度なXTALを使って音が良くなるのではなく、綺麗な波形を出してくれるXTALが音が良いし、電源回路に低ノイズなものを使うと音が良くなるのだ。
そのスペクトルの汚れ方の傾向を考えれば、デジタルオーディオの音質悪化の傾向も分かるのだろう。(測定するのは難しいだろうが)
大分以前にこのような記事(分割ライン以下)を書いたけれど、それを補足する。
『 ”データにエラーはない” だからデジタルオーディオは音が良い』 と皆思わされてきた。しかし、良く考えるとデジタルデータと言えどもその波形は全く異なっている。きれいな波形も有れば汚いノイズだらけの波形もある。デジタルの凄いところは波形がどんな汚くてもデータエラーになることはまずない、という点だ。
しかし、例えば下図のようにメモリーからデータを読み出す場合を考える。デジタル的に考えれば”1”、”0”の信号を読み出すだけで、デジタルデータに何の間違いもない。 しかし、同じ”1”、”0”と言ってもその波形に含まれるノイズレベルは全く異なっている。

この様にどちらのメモリーもデジタルデータとしては全く問題がないメモリーだが、この両者のデータを音楽データとして使う場合はどうなるか? このようなノイズの多いメモリーを搭載した機器は当然基板全体がノイズっぽくなる。ノイズとジッターは紙一重だから結果としてその基板はジッターを多く含んだ音楽信号を作り出す。
大事なのは、どちらも正しいデジタルデータを送り出しているが、それ以外にノイズも付加して送っていると言う事だ。
正に、
『 Digital Signal & Analog Noise Audio 』 である。
しかも今までの経験で言うと、同じメモリーでも書き込まれるデータの質によって出力するノイズの量が変わるようだ。きれいなデータを書き込めば出力される波形も綺麗になり、汚いデータを書き込めば出力される波形も汚くなる。
つまり前段がノイズっぽいと、そのノイズが後段に伝搬していくという事。(Gndを通じて後段にノイズが伝搬するというだけではなく、波形の汚さが伝搬していくのだと思う)
だから私たちは、
各段で発生するノイズを少しでも減らして波形を綺麗にしないと、システム全体のジッターを減らすことは出来ない。という事なんだろう。
再度、NASの電源(12V)を安定化電源直結とJungレギュレーターを入れた時とどっちが良いか聞き比べてみた。やはりJungを入れた方が立体感がうんと増す。

さらにHub(FX-08mini)の電源のACアダプター(スイッチング)を安定化電源に変えてみた。これも立体感がうんと増して良い。

この2点をやると驚くほど深みのある音になる。やはり電源の威力はすごいんだな。Hubの電源やマスタークロック関係にもJungを入れたくなるな。やり方を考えないと。
それにしても、DACから見るとはるか先にあるNASの電源の質でこうも音が変わるのが不思議ではある。理由を考えると、NASの電源が良くないと、ネットワークの信号がノイズっぽくなり、それがHubを通じてネットワークプレーヤーに影響し、最終的にSPDIF信号のGndレベルが振られるからそのノイズがジッターとしてDACに影響するのだと思う。
要するに、デジタルオーディオと言ってはいるが、デジタルなのはクロックに同期してみた時の電圧レベルの『1』、『0』的な話であって、信号ノイズとしてはアナログ的に後段に伝わっていき、最後にジッターに化けると言う事でしょう。
これは 『 Digital Signal & Analog Noise Audio 』 と呼ぶのが正しい。 要するに、ノイズ(ジッター)の伝わり方に関しては、デジタルではなくアナログオーディオだよね。どうやってノイズの伝搬を止めるかを考えないと音は良くならない。だからシステム全般の電源の質を上げて、ノイズレベルを下げて行くしか音質を改善する方法は無いってことだ。これでは、本当のデジタルオーディオではないと思う。
多分、ノイズとジッターは紙一重なので、機器の中で ジッター <---> ノイズの入れ替わりを繰り返し、複雑な振る舞いをしているんでしょう。
今のデジタルオーディオは、アナログオーディオのシャーというノイズや歪を、形を変えて見つかり難い様に、ジッターとして潜り込ませた悪意のあるオーディオとも言えるか。
- 2017/01/21(土) 00:03:48|
- ジッターについて
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LAN経路上でも、SPDIFのようなデジタルオーディオIFと同様にアイソクロナス転送が実現されているならこの仮説は瓦解します。その時は「謎」というよりほかないですorz
- 2017/01/22(日) 16:47:41 |
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- わさびアイス #-
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以前も少し触れましたが、なぜこれをカスケード接続すると、音質向上につながるのか。あれからもう少し考えてみましたが、おそらくハブからハブへの転送にかかる、オーバーヘッドが介在して、結果として転送速度が下がり、かつバースト転送の間隔が短くなり、電源負荷が次第に均等化することによる効果のように思えてきました。なので電源の容量も増やさなければならないですが、多段化すればするほど、均等化が進んで音質改善につながる、という具合なんでしょう。
100BASETですら、オーディオデータの転送には速すぎて、ガラ空きの高速道路みたいになっているのがかえってよくない、みたいな話かも。
- 2017/01/22(日) 14:51:38 |
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- わさびアイス #-
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わさびアイスさん
はい。ノイズが伝わる経路が有れば、そこからノイズが伝わって最終的にジッターを生じさせる事になると思います。『ノイズのあるところジッター有り』なので。:-)
- 2017/01/22(日) 13:08:40 |
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- Cocoパパ #-
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ご教示有難う御座います。バイナリ一致を前提とすると、「音質が変わる」要因は、すべて最終段のDAとアナログアンプに集約されます。はるか前段の電源を変えることで、音質が変わるのは、そのことで最終段に、どのような経路でどういう影響が及ぶのか。つまりそこでのジッターと純アナログ的な挙動がどう影響受けるのか。
結局、純アナログ系を脇に置けばDAのクロックのジッターがGNDの揺らぎや、クロック波形自体の品質(特に立ち上がりのtan)で影響受けて、音質の変化につながっているんでしょう。これはケーブルを変えても同様なことが起きているとみなせそうかと。
こ前段で生じた、変動要因は、信号系とACラインの二つを伝わってDAに到達している。
と考えないと、デジタルオーディオも不思議くんの世界になってしまう・・・・かな(^^ゞ
- 2017/01/22(日) 09:32:42 |
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- わさびアイス #-
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試行回数は少ない(3回程度)ですが、E-MU 0404 を使って SPDIF ループバックしてそれを検証したことがありますが、バイナリ一致しましたよ。
- 2017/01/22(日) 08:25:20 |
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- kei #N/7Pc.D2
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ハードディスクやCDに記録されたオーディオデータはエラーが生じるのを前提に、EDCやECCが付加されていますが、いったんデジタルオーディオデータにデコードされて以降は、PCMだろうがDSDだろうが素のビット列の垂れ流し。これはかつて、マルチメディアデータの取り扱いで、エラー訂正でリアルタイム性を損なうより、垂れ流しを良しとするスタンスがそのまま継承されているから。確かにTTLレベルでデータ伝送している限り、エラーは生じないように思われるが、誰かプロトコルアナライザなりでSDPIFとかを観測したことがあるのだろうか。基本的に疑問がある。
- 2017/01/21(土) 20:11:50 |
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- わさびアイス #-
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