hiFace Evo の内部:SPDIF系の出力にはすべて絶縁処理がされ、I2Sの出力はLVTH125で駆動されているのがわかる。SPDIF信号については、下記に良い解説が有りました。
RATOC社の解説I2S信号についてはD/Aコンバーターチップの資料を見るのが早いと思います。

SPDIF信号は、本来別々に送るべきデータ信号とクロック信号を無理やり一本の信号線で送れるようにエンコードして送っています。その事自体はコンピューターの通信の世界でも行われているわけで、データのエラーはよほどひどい通信環境でなければ起こりえません。つまり完全に可逆性の変換で元の情報(データ)を復活させる事ができます。
しかし問題はクロック信号です。SPDIF信号が繋がるD/A変換機器などではこのクロックを基にして音楽信号を再生しているのです。クロック信号はSPDIF信号から完全に復元できるのでしょうか?これは不可能ですね。デジタル伝送をすると必ず時間的な揺らぎ(ジッター)が信号に乗ります。それは一度乗ってしまったらきれいに取り去る事は大変難しいです。
低価格なD/Aコンバータ機器などではSPDIF信号から得たクロック信号で音楽信号を再現しています。要するにSPDIF信号に乗ったジッターのあるクロックそのもので音楽を再現しているのです。
こんなシステム設計はインチキとしか言いようがありません。HiFi再生を目指す人たちはこの作戦に乗ってはいけません。このやり方はあくまでも低コスト機器で音の良し悪しなどどうでも良い場合に限られます。
高級なD/Aコンバーター機器ではクロックを再生する方法に手間をかけ、リクロックしたり一旦メモリーバッファーに音楽信号を蓄えてから再生するようにしてSPDIF信号のジッターが音楽再生に影響しないようにしたりしています。
また、プロ用機器では精密なマスタークロックを各機器に配信し、すべての機器がそのクロックに同期して動くようにしたりして、データ伝送や音楽再生の正確さを得ようとしています。
それはそれぞれ理論的には正しいやり方だとは思います。しかし、よーく考えて見ましょう。
そもそもなんでSPDIF信号を使う必要があるのでしょうか?
I2S信号を送ってやれば良いじゃないですか。そうすればデータもクロックも送れる。
そうならなかった理由は、1本のシリアル信号で送らないとコストもかかるし、配線の手間もあるからで、それを定義した人たちがコンシューマー用のオーディオ機器を設計するSONYとフィリップスだったからです。
I2S信号は、D/Aコンバーターチップ用の信号ですので信号線を長く伸ばせませんから、低コストなコンシューマ製品には使えません。
それはもっともなんだけれども、その結果定義されたSPDIF信号からHIFIなオーディオ信号を得るのは大変難しくなってしまったのです。
何が言いたいかというと、低コストなオーディオ機器用のデータ伝送を考えて作ったSPDIF信号を、高級オーディオ機器で使うのがそもそも間違っていると思うのです。
だからそれを克服するために家庭用オーディオにプロ用機器(マスタークロック)を使って数百万円もかけている人たちがいますけど、私はそれはクレージーだと思うのです。
I2S信号を使えば、hiFace Evo と安価なD/Aコンバータ基板(チップ)で大変高度なD/A変換デバイスが構成可能な事がわかりました。(このままでは10cmしか伸ばせませんけどね)
プロ用機器ではクロック信号をきちんとすべての機器に分配しているのです。最初からやる気があれば出来るのです。それをやっても数百万円もするような機器になるわけではありません。
今一度、高級オーディオ機器のための信号伝送インターフェースを定義する必要があると思います。
- 2010/11/28(日) 14:35:59|
- システム解説
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はくびしんさん
メッセージありがとうございます。
最近はクロックのリカバリーもかなり出来るようになっているようです。きれいなクロックを送るのとリカバリーするのとどっちが良いかという選択になるかと思います。よろしくお願いします。
- 2015/10/16(金) 14:16:03 |
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- Cocoパパ #-
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小生通信機作ってる人ですが、最近自宅でオーディオに凝ってSPDIF製品の低品質ぶりを知り、クロックリカバーに甚だ疑問を持っておりました。同期通信って全部クロックがアウトバンドですから。このページを拝見させていただきスッキリしました。I2Sベースで自作路線に転換すべく部品探しの旅に出ます。素晴らしい記事に感謝します。
- 2015/10/15(木) 17:53:33 |
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- はくびしん #pmHhnA7M
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